猫の乳腺腫瘍は、10歳前後の雌猫ちゃんに多く、そのほとんどは、悪性の乳腺癌です。 若い頃に避妊手術を受けた猫ちゃんの方が、乳腺癌の発生リスクが低いと言われています。(しかし、発生が認められないわけではありません。) 現在のところ、有効な治療法は、外科手術を受けることです。癌が大きいほど、予後は悪いと言われているため、早めに手術を施すべきだと考えられています。手術は、癌を含む乳腺を、できるだけ広範囲に切除します。 しかし、手術後に再発、切除されていない部位への癌の発生、リンパ節などへの転移も少なくありません。つまり、頑張って手術を受けたにもかかわらず、すべてがうまくいくわけではないのです。 補助療法として、抗がん剤などの投薬や、施設によっては放射線治療を実施する場合もあります。 専門医による手術と、麻酔管理や疼痛管理、24時間の入院管理や看護、CT検査、放射線治療など、より理想的な対応をご家族が希望されれば、二次診療施設への紹介を行います。

乳腺癌について説明する際、ご家族の反応は様々です。すぐに手術を希望されることもありますが、多くの場合、相談や検討する時間が必要になります。獣医師は、ご家族の考え方に添いつつも、猫ちゃんの状態を考慮し、より適切な治療や対処を提供しなければなりません。このことは、乳腺癌の場合に限らず、悲観的な情報が多い病気に対しては、同様の対応が必要です。 例えば、高齢を理由に治療を躊躇する場合は、身体検査から始めて、癌の状態だけではなく、全身状態の評価をできる限り詳しく行い、その結果に基づくリスクと対処を説明します。ご家族の心情を考慮に入れても、実施が可能ならば、手術によって治る可能性があることをきちんと説明すべきでしょう。 もし、すでに癌からの出血や分泌物が見られる場合は、ケアの方法、緩和のための手術、半導体レーザーによる処置などについて説明します。  病変をかばう、気にするなどの仕草が見られる場合は、その評価や受け入れ方が、ご家族ごと、猫ちゃんごとに異なるため、痛みの評価や観察方法、ケアの方法について相談、説明します。 すでにリンパ節などへの転移が疑われる場合や、すでに転移に伴う病状が認められる場合には、これから考えられる経過とともに、してあげられる事や、耐えなければならい事について説明します。 進行してしまった状態の猫ちゃんを看護しているご家族は、正解の解らない中、悩みながら暮らしているはずです。獣医師は、結果的に適切かどうかはわからないとしても、よく話をして、考えられる限り、ご家族のお手伝いをしなければなりません。

乳腺癌に限らず、皮膚の腫瘍では、ご家族が猫ちゃんを触っていて気がつき、来院される場合がほとんどです。特に、中年以降の猫ちゃんと暮らしているご家族は、体のどこかに「しこり」がないか、ブラッシングなどの際に、触って確認してみるとよいでしょう。(ただ、異常を探そうと思うあまり、猫ちゃんから嫌がられないようにしましょう。)