最近は、猫にも糖尿病があることが、周知されるようになってきました。しかし、一緒に暮らしているおうちのねこちゃんが、実際に糖尿病に罹患することを想像するのは難しいようです。そのため、全身状態が悪化してしまった後に、来院される場合も、少なくありません。糖尿病の猫は、飲水量と尿量が増える、と言う話は、よく耳にする情報だと思います。おうちのねこちゃんを観察することで、なるべく早く病気に気がついてあげることは大切です。早期の診断と、治療開始によって、重篤な併発症を避けることができるでしょう。
糖尿病と診断されたねこちゃんには、獣医師の説明や指導のもと、インスリンの投与が必要になります。多くの場合、ご家族の方が、生涯にわたり、1日2回、決められた時間に、ねこちゃんへ注射を行わなければなりません。また、インスリンの種類や量による効果判定と、併発している疾患の影響などを考えつつ、治療内容を調整していかなければならないでしょう。上手に治療を開始できたとしても、安定するまで、2カ月くらいは要します。また、その後の維持、併発症の治療や管理も重要です。そのため、治療に対して、難しい印象を持つ方も多いと思います。確かに、糖尿病を管理するには手間暇がかかります。しかし、それらが、ある程度うまくいけば、糖尿病の予後は悪くありません。なおかつ、一部のねこちゃんでは、インスリン治療から解放されることもあるのです。 獣医師は、治療を成功させるために、ねこちゃんとご家族が受け入れられるように、焦らせず、何度も説明や、相談を繰り返していくことが大切だと思います。
糖尿病のねこちゃんに治療を行わなかった場合、全身の代謝や維持機能は、徐々に損なわれてしまいます。その結果、体重の減少とともに、ひどい時には意識障害など、命に関わる状態に陥ります。そのような状態に陥ると、入院による集中治療が必要になります。ただ、全てのねこちゃんが無事に退院できるわけではありません。
猫の糖尿病は、一般的に、中年以降の発生が多いこと、過体重や膵炎はリスク因子と考えられていることなどから、長年の生活習慣における、いくつかの要因が、発症に影響している可能性があると思います。運動や食生活を見直すことが、対応策の一つでしょう。