レプトスピラという細菌の感染症に対する予防注射(ワクチン)があります。
ワクチン接種は、十分な内容説明の後、個々の生活環境内における感染リスクを検討し、ご家族の方針に配慮した上で、実施が検討されます。レプトスピラ症に対するワクチン接種の際、それらは時に煩雑となります。
レプトスピラ症について。
レプトスピラは湿った土壌や淡水中に存在する細菌です。感染した動物の中には、保菌動物として、尿中に細菌を排出するものもいます。そのため、犬に対して注意すべき環境として、用水路や川べりの散歩、川や山へのレジャー、野生動物やネズミの出現などがあげられます。
犬レプトスピラ症のうち、いくつかは人獣共通感染症に指定されています。それが犬に発生した場合、人への感染源になる可能性が否定できないため、公共機関への届出義務が生じます。
私の暮らしている地域では、発生の報告がほとんどないため、発症までの経緯や病状がよほど一致しない限り、最初から本疾患を疑うことはありません。ただ、診断されずに治療が施されているケースもあるでしょう。
ワクチンについて。
レプトスピラ症には多くのタイプが存在します。また、そのタイプごとに予防できるワクチンが異なります。例えば、Aタイプのレプトスピラ症には、Aに対するワクチンしか効きません。つまり、Bタイプのワクチンでは、Aタイプを予防することができないのです。現在のところ、4つのタイプに対するワクチンが販売されています。販売会社の考え方によって、数種類のタイプが組み合わせてあります。ただ、犬で報告されている、全てタイプに対するワクチンはありません。ワクチン全般に言えることですが、効果の持続する期間はわかりません。ただ、レプトスピラワクチンの効果期間は長くないと考えられています。
本院におけるワクチンに対する考え方。
近隣ではレプトスピラ症の発生が稀なため、基本的には、レプトスピラを含まない5種混合ワクチンを使用しています。レプトスピラ症に対しては、リスク回避の説明をすることの方が多いと思います。ただ、ご家族の希望、周囲環境、行先の情報などによって、2種類のタイプのレプトスピラを含んだ7種混合ワクチンを選択しています。