犬の僧帽弁閉鎖不全症
犬で、よく耳にする心臓の病気として、いわゆる僧帽弁閉鎖不全症があげられます。
病気を簡単に説明すると、心臓にある僧帽弁の形が変化し、その閉鎖が不十分になることで、血液の逆流が起こります。結果、心臓や血管に負担がかかり、それらの余力を超えてしまうと、活動性の低下や咳、呼吸困難などが認められるようになります。そして、最終的には、命に関わる状況に陥ってしまいます。
一般的には、病状や症状に合わせた投薬治療を行います。最近では、僧帽弁閉鎖不全症に対する手術を実施できる施設が増え、その治療成績も向上し、その適応も広がっています。術後、投薬から解放されるケースも多いようです。結果、手術も治療の選択肢として認められるようになってきました。
僧帽弁閉鎖不全症では、聴診によって、血液の逆流する音(心雑音)が聴取されます。初期には何の症状も示さないため、予防接種などで受診した際の身体検査で、心雑音を指摘され、病気の存在を知ることが多いようです。ただ、元気で、症状を示さない時点では、ご家族にとって受け入れ難い話でもあり、その捉え方や反応は様々です。そのため、基本的な事柄だけではなく、ご家族に受け入れやすいような、それでいて感情のみに頼らないような、補足説明が大切になります。
以下、基本的な説明を記載します。
1この病気は、進行性です。ただ、その進行速度には個体差があります。
2心臓は余力を持っているため、病気が進行しないと、症状が現れません。
3つまり、症状が現れた時には、ある程度、病気が進行した状態です。
4症状がいつ現れるのか、どんな症状が現れるのか、にも個体差があります。
5まずは各種検査を行い、現状を把握します。
6その後、定期的な検査を行い、その結果を比較し、評価します。
7心臓の拡大が認められたならば、投薬を開始することをお勧めします。
8投薬は、生涯にわたり、必要になるでしょう。
9また、薬の内容は、病状によって追加、変更します。
10投薬によって、心臓の負担軽減、心臓の働きの補助、ができます。
11投薬の目的は、患者の生活の質を保つことです。
12また、投薬によって、病気の進行を遅らせることを期待します。
13投薬しても、病状は進行していくことが多いため、症状の観察は重要です。
14症状がない時点での投薬は、慎重に、ご家族と相談しなければなりません。
15なぜなら、現時点における投薬が、効果的かどうかがわからないからです。
16また、(投薬の有無にかかわらず、)急な悪化の可能性も否定できません。
17安静時や興奮時の呼吸数、咳の頻度や程度、活動性の低下を観察します。
18急に症状の悪化が認められたら、すぐにご連絡をください。
繰り返しになりますが、私は、これらの説明に加えて、ご家族の質問や疑問、希望に対し、臨機応変を心がけた、補足的な説明を行う努力をしたいと思っています。