犬のアトピー性皮膚炎は、長期間にわたり、持続的、断続的に、痒みを訴える病気です。一般臨床の現場では、比較的多く見かけられる病気の一つでしょう。
この皮膚炎が発症してしまうと、生涯付き合っていかなければならない病気のため、その維持治療については、かかりつけ医において行われることが多いと思われます。獣医師は治療の際、きちんとした除外診断を行い、より良い管理方法を、ご家族と共に考えていかなければなりません。相談結果によっては、皮膚科専門医を案内する場合もあるでしょう。
アトピー体質を改善できれば、皮膚バリヤを正常化できれば、誘発要因を環境から排除できれば、などとの考えから、食事やサプリメントの選択、皮膚保護のための保湿剤や外用薬、シャンプーの使用、体質や環境要因について調査するための血液検査が行われています。
※血液検査によるアレルギー検査を行っても、全てが解決するわけではありません。獣医師は、検査の実施前に、その結果をどのように解釈し、どう治療に結びつけるかについて、ご家族に説明しなければなりません。
また、治療薬として、痒みを抑える、炎症反応を抑える、免疫反応を抑える、免疫バランスを整える、アレルゲンに体を慣れさせる、などを目的とした薬剤があり、それらを組み合わせた治療を行います。また、二次的に引き起こされる感染症や、皮膚の変化についても必要であれば治療を加えます。
治療の目標は、病的な痒みを無くすことです。しかし、その達成は非常に難しいため、実際には、本人とご家族が許容できる範囲に病状を抑え、二次的な皮膚の変化や感染症をコントロールすることが目標となるでしょう。
実際の治療について、簡単にお話しします。まず、ご家族の考え方やご家庭で実施可能なこと、わんちゃんが許容できること、などを聞き取ります。そして、治療開始時点での、治療目標を設定します。次に、治療後の効果判定を行います。同様の結果が得られたとしても、各ご家庭によって、その判定が異なることもあるでしょう。その上で、治療目標の再設定を繰り返していきます。
皮膚の評価は、その場の痒みを抑えればいいというわけではないため、年間を通して行います。時期やタイミングによっては、同じ治療を施しても、治療効果が違うことがあります。その際には、なぜ違うのかを検討しなければなりません。最初から痒みや炎症をきっちり抑え込まなければならないこともありますし、一つずつ治療を加え、その反応を評価してから、次の治療を決定する場合もあります。同じ1日、同じ1年を過ごしているわけではないため、評価が混乱する場合も多いのですが、ご家族と共に、その子のためを思って、一生懸命考えることでパターンが見えてくることもあります。
個人的には、既存の治療方法の中で模索し、なるべく内服薬を減らす努力をしていきたいと思っています。もちろん、本人とご家族にとっての必要性を第一に考えることが前提です。